ニュートラルな感性で沖縄の風土や歴史を器に映す #壹岐幸二さん

沖縄の自然・風土・歴史をテーマに、現代生活に寄り添える器づくりを目指す陶芸家の壹岐幸二さんにお話を伺いました。


 
【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて
読谷にあるやちむんの里から、車で少し移動した場所に陶器工房壹を構える壹岐幸二さん。工房からは海や自然を見渡すことができ、ギャラリーには日常使いできる作品からアート作品が並びます。
 
京都出身である壹岐さんは、バブルの影響で古都らしさが失われつつある街を抜け出したいとの思いで、開学したばかりの沖縄県立芸術大学へと進学します。地方では工芸が盛んな印象を持っていたこともあって、工芸科の陶芸コースで学ぶうちに、いつの日からかものづくりへの想いが芽生え、陶芸の道を志すきっかけとなります。
 
沖縄のやきものといえば民芸のイメージで親しまれていますが、壹岐さんは、学生時代に見た16世紀の涌田焼(わくたやき)や19世紀の白い化粧土の焼き物といった沖縄古陶の素朴で力強い姿に「これこそ自分の居場所だ」とインパクトを感じたといいます。そして大学卒業後は、生涯の師でもある読谷山焼・大嶺實清さんの工房に弟子入りし、のちに独立します。以来、壹岐さんのものづくりは、琉球王国時代の空気感を意識しながら、沖縄の自然・風土・歴史をテーマに、現代の生活に寄り添える器を目指して日々進化を遂げています。


 
【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること
沖縄の歴史を王朝時代までさかのぼり、深く見つめながら作陶を続ける壹岐さんは、どんな姿勢で作品づくりに向かっているのでしょうか。
 
「なるべく社会的にも政治的にも経済的にもニュートラルでいようとしていることかな?何かに固執してしまうと、感性というものは歪みに歪んでしまうものだと思います」
 
壹岐さんの作る器は、感性を研ぎ澄ませ、一心に作品を突き詰めていくことから生まれてくるようです。


 
【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと

ニュートラルな感性で沖縄の風土や歴史を器に映す #壹岐幸二さん


琉球王朝時代の骨董には、柳宗悦が「卵の殻のように白かった」と喩えるほどの美しい白地に、冴え渡るような青の染付柄が映える器があり、壹岐さんの代表作の1つ『染付』シリーズはその時代の再現に取り組んだ作品です。また『mintama』シリーズは、16世紀以前の沖縄で「湧田焼」という窯集落で焼かれていた器を、現代風にアレンジしたものです。器の内側に現れる、土が露呈した部分に打った点打ちが目玉のように見えることから、沖縄の方言で目玉を意味する『mintama』と名付けられました。
 
「琉球という土地だからこそ育まれた形や、ここでしか生まれないものがあります。沖縄のやきものは重心の低さや曲線の丸さ、横広の安定感などゆったりとした器です。沖縄の土は可塑性がない、造形がしづらい土だからこそ育まれた“沖縄の形”があり、そこを意識しながら素直に作っていくことが大切です。そして、生まれてくることの意味に納得ができること。消費主義社会のために作陶しているのではなく、自分の存在を投影するために、ものづくりをしています。日用の美としても食材や料理が映える余白を残した器、対話ができる器を意識しています」
 
壹岐さんが大切にする沖縄の地で培われてきた文化や伝統に、現代的な美しさと心地よさが加わり、11つの作品がさらに魅力あるものになります。

 


【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと
焼き物とは、その土地のルーツと切り離せないものだと壹岐さんは考えています。
 
「焼き物は歴史や風土に培われて継承されて来たものと捉えていて、その地の独自性を大切にしながら現代を見据えるようにしています。これからの展望としては、その捉え方を深化させて、よりこの地でしか表現できないものを作っていきたいですね」
 
沖縄古陶のような品格と現代生活に寄り添う使いやすさが融合した壹岐さんの器には、どれも沖縄の風土や歴史が凝縮されているのです。
 

 

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