沖縄の風土や歴史を映すやちむん  #壹岐幸二さん

 読谷にあるやちむんの里から、車で少し移動した場所に陶器工房壹を構える壹岐幸二さん。工房からは海や自然を見渡すことができ、ギャラリーには日常使いできる作品からアート作品が並びます。いつの日からか、ものづくりになりたいという漠然とした想いが、陶芸の道を志すきっかけとなります。京都で過ごしていた高校生3年生の頃に、沖縄県立芸術大学が開学されることを知り、地方では工芸が盛んな印象を持っていたこともあって、工芸科の陶芸コースに進みます。

 代表作の中に、「染付」や「mintama」シリーズがあります。琉球王朝時代の骨董には、柳宗悦が「卵の殻のように白かった」と喩えほどの美しい白地に、冴え渡るような青の染付柄が映える器があり、「染付」はその時代の再現に取り組んだ作品です。

 「mintama」は、16世紀以前の沖縄に「湧田焼」という窯集落で焼かれていた器を現在風にアレンジしたもので、器の内側に現れる土が露呈した部分に打った点打ちが目玉のように見えることから、沖縄の方言で目玉を意味する「mintama」と名付けられています。

 

沖縄の風土や歴史を映すやちむん  #壹岐幸二さん

 

 

 陶芸作品の作り手として大切にされていることをお伺いすると、次のように語っていただきました。

 「琉球という土地だからこそ育まれた形、この土地でしか生まれないものがあります。沖縄のやきものは重心の低さや曲線の丸さ、横広の安定感などゆったりとした器です。沖縄の土は可塑性がない、造形がしづらい土だからこそ育まれた“沖縄の形”があり、そこを意識しながら素直に作っていくとこが大切です。そして、生まれてくることの意味に納得ができること。消費主義社会のために作陶しているのではなく、自分の存在を投影するために、ものづくりをしています。日用の美としても食材や料理が映える余白を残した器、対話ができる器を意識しています。」

 

沖縄の風土や歴史を映すやちむん  #壹岐幸二さん

 

 現代の美しさと心地よさに加え、壹岐さんが大切にする沖縄の地で培われてきた文化や伝統に触れることで、1つ1つの作品がさらに魅力あるものになります。

 

沖縄の風土や歴史を映すやちむん  #壹岐幸二さん

 

 

壹岐 幸二/Kouji IKI

地層、地殻変動、断崖、城壁、厨子甕(骨壺)、ウタキ、化石(土を科学的に焼くのは化石と変わらない)など、自然や大地をテーマにした作品づくりを行う。沖縄の自然・風土・歴史をテーマに現代生活に寄り添える器づくりを目指している。

1966年 京都生まれ
1986年 沖縄県立芸術大学開学。一期生として入学
1987年 生涯の師と仰ぐ大嶺實清氏に学ぶ
1991年 同大学研究生終了
1991年 読谷山焼・大嶺實清工房に弟子入り
1996年 陶器工房壹 設立
沖縄の視座に立脚した作陶を展開。現在に至る

 


 

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