自分への反骨精神がものづくりのパワーを生みだす #金城有美子さん

豊かな色彩で沖縄の自然や情景を映し出すやちむんづくりを続けている、金城有美子さんにお話を伺いました。

 


 
【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて

自分への反骨精神がものづくりのパワーを生みだす #金城有美子さん


沖縄県南風原町で生まれ育ち、今も同じ場所で作品作りを続ける金城有美子さん。建築家であり沖縄民芸にもゆかりの深い父の影響で、子供の頃から陶器・織物・染物を日常的に使っていたこともあり、自然な流れで美術に関心を持つようになり、やがて陶芸の道を志すことになりました。
 
大学で陶芸を学んだ後は、沖縄の土地で作陶することの意義や、沖縄とは、自分らしさとは、などの考えを巡らせては悩み、切磋琢磨する日々を過ごしますが、32歳の時の個展で「自分がシャープなイメージで作っていた作品に対して『沖縄の人らしいラインね』と言われたことで気持ちが楽に。自分には沖縄らしい感性が備わっていて、どんな土を使ってもどんな作品でも沖縄らしくなるんだと思えたんです」と語ります。
 

 

【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること

作品制作において、インスパイアされているものをお伺いすると「自分自身に対して抱く反骨精神、パンクスピリットでしょうか(笑)。『自分に負けたくない』という気持ちが、ものづくりのモチベーションとなっていて、脳がフル回転していく感覚があります。また、人をサプライズすること、喜ばせることが大好きで、自分自身も驚きたいという想いが、ものづくりの着火点になっています。また、落ち込み、悩み、停滞している時間も大切にしています。新しい波や風が訪れる前触れのように感じられるからです」と語ってくれました。

 


【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと

自分への反骨精神がものづくりのパワーを生みだす #金城有美子さん


金城さんの作品が醸し出す沖縄の雰囲気は、どこから生まれてくるのでしょうか。
 
その1つは、沖縄の情景を映し出す豊かな色彩です。当初はモノトーンの器制作をメインにしていましたが、学校の教師をしている友人から、陶芸の授業を受け持つように頼まれたことが、色鮮やかな作品を作陶するきっかけになりました。学生たちは普段使っている渋い色の釉薬よりも明るい色の方が喜ぶだろうと、ピンクや黄色などを用意したところ、偶然に出来上がった作品がとても新鮮で、それが今のカラフルな絵付けの作品へと通じています。
また、沖縄を感じさせる要素として欠かせないのは、庭の草花や野草といった具体的なモチーフです。夜に咲いて朝に散る、幻の花と呼ばれる『サガリバナ』は特に好きな花のひとつで、沖縄の夏の風物詩として絵付けの柄にも登場しています。他にも、ラインや厚みの表現や、サンゴが育む沖縄の美しい海を伝える『サンゴブルー』の色彩、夏の強い陽射しと影の陰影を表現した『夏影』といった名づけなど、作品にはたくさんの沖縄の感性が詰まっています。
 
そして代表作とも言える『サンゴブルーの器』には、沖縄の思い出を持ち帰ってもらいたいという思いに加え、環境に対する思いが込められています。
 
「小さいころは生きたサンゴの周りに魚がいる風景が当たり前でしたが、その美しい海は失われつつあります。この器でサンゴが育む美しい海を伝えていきたいと思っています」
 
金城さんの器のきらめきには、沖縄の美しさを守りたいという思いがちりばめられているのです。

 

 
【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと
金城さんは、固定観念にとらわれることなく、いろんなやり方を自由に取り入れられるように「自分自身は中立的な生き方をしていきたい」と言います。
 
「工芸が好きな人もその担い手も、少しずつ数が減っている今の時代に、まだ陶芸ができていることこそが幸せだと感じています。だから、もうやりきったと満足できるくらい、とことん挑み続けたいのです」
 
生まれ育った町の温かな人々に見守られながら作品作りを続ける金城さんの挑戦は、国内だけでなく海の向こうの国までも届くことでしょう。
 

 

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