木目の美しさや柔らかな手触りに愛着を感じる器や道具作りをしている、平安山なほみさんと米須美紀さんにお話を伺いました。
【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて
沖縄県うるま市にある平米(へいべい)は、平安山なほみさんと米須美紀さんの2人の頭文字を組み合わせて名付けられた木工制作所です。2人の感性が合わさって生み出される木製の家具や小物の佇まいは、可愛らしくて美しい、ずっとそばに置いておきたくなる作品ばかりです。
沖縄出身の米須さんは、幼い頃、インテリア雑誌をめくりながら部屋のインテリアを想像することが好きで、いつか自分で家具を作ってみたいと考えるようになりました。大学院卒業までに、プロダクトデザインや陶芸を学び、卒業後はリフォーム会社で大工の仕事をするなど、さまざまな角度からものづくりの経験を積んできました。その中で、子供の時から興味があった木製の家具を作りたい、という強い意識が芽生えていきました。
東京出身の平安山さんは、小学校時代から得意だったアートを学ぶことを志します。中学時代に出会った版画によって“木を彫ること”に魅せられ、芸術高校の彫刻科で学び、木材を使った表現を磨きます。その後は親戚がいる沖縄の芸術大学で彫刻を専攻、一旦は会社勤務を経験するものの「みんなに使ってもらえる木製の生活用品が作りたい」という思いを抱くようになります。
2人が木材を使った手仕事を究めるために学び舎として選んだのが、沖縄県にある木工研修所でした。教室で前後の席だった2人は、幅広くアートを学んだ経験が共通し意気投合、お互いの作品について率直に意見をぶつけ合える存在に。
「2人で一緒にやれば、独りよがりにならずに本当にいいものが作れるはず(米須さん)」と感じたことで、共に制作所を立ち上げることを決意します。研修所で同じ木工技術を身につけていることに加え、それぞれの得意な技術で支えあうことが出来るので、作品を2人で作りあげることが、最大の強みだと考えています。
【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること
沖縄らしいやちむんの絵柄やホーローの縁取りを取り入れた木の器シリーズは、沖縄の木工では珍しい、絵付けを施した作品を作りたいとの考えから誕生しました。
「やちむんもホーローも、長い歴史があり人々に愛されてきた器や道具ですが、その素材が陶器やホーローではなく“木”で出来ていたら『何これ?!』って驚きますよね。これは絶対にカワイイはず!と確信しました(平安山さん)」
そんな“意外なユーモア”のアイデアは、買い物の最中や雑誌を読んでいるときなど、目にするものをすべて『木に置き換えたらどうなる?』と考えることから生まれてくるといいます。だからこそ、お客様が器をみたときの楽しげな表情をみると、嬉しさがこみ上げ心の中で「やったあ!!」と叫んでいるのだとか。
【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと
2人が目指すのは、愛着を感じて長く使いたいと思ってもらえる『添い遂げるものづくり』です。
「木材を使えば、陶器より軽くて持ちやすいのですが、重みがない分、器がひっくり返らないように底の形状を大きくするなど、使いやすさへのこだわりはとことん追求します(米須さん)」
使い込むほどに色合いが深まっていく器の木材は、木目が美しい沖縄産のクスノキやセンダン、タブノキを用いています。同じデザインの器でも使う木材を変えて木目の違いを見せることで、バリエーションを増やし、選ぶ楽しみを持たせています。
「陶器や漆とも違う、独特の木の柔らかさを愛でてもらいたいので、器の木肌をいっぱい触ってください(米須さん)」
【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと
平米では、受注製作品としてではなく、伝統的な技法・技術の向上を目指すことや、それを用いた現代の生活に合うデザインを実現するための家具づくりを、少なくとも年に1回は続けているそうです。
「2021年からはうるま市の特産物であるビーグ(い草)を縄編みし、スツールの座面として使用することで、畳としてだけではない新しい価値を生み出せるのではないかと試験的に制作しています」
ユーモアや意外性で人々を楽しませたいという思いが詰まった平米の作品作りからは、今後も目が離せません。
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