異業種同士の交流から意表を突く新アイデアを発想 #Momentum Factory Orii 折井 宏司さん

伝統工芸である高岡銅器の技術を引き継ぎながら、従来にない銅着色の製品づくりを続けているMomentum Factory Oriiの折井宏司さんにお話を伺いました。

 

【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて

 

【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて

富山県高岡市は400年以上の歴史をもつ高岡銅器の産地です。Momentum Factory Oriiは、その高岡銅器に色をつける『折井着色所』として昭和25年に創業し、現在は3代目となる折井宏司さんによって、伝統の着色技術を応用した新たな製品を生み出す挑戦を続けています。
 
高岡銅器は、原型、鋳造、仕上げ、着色、彫金と、工程ごとに製作所や職人によって分業で作られます。戦後は火鉢が飛ぶように売れ、その後も干支の置物や企業の記念品として親しまれましたが、バブル崩壊後は製品需要が激減します。待っていても着色の仕事が来ないことに危機感を持った折井さんは、自社内で製造販売できるオリジナル製品の開発に乗り出します。
 
「型が必要な鋳物は、型のコストが高く少量生産が難しいので、型を必要としない銅板に着目しました。軽くて加工がしやすい銅板なら、小さい置物だけでなく、インテリアや建材など大型のアイテムも作ることができます」
 
伝統を受け継ぎながらも、新しいものづくりにチャレンジする精神が生まれたのは、折井さんのこれまでの経歴にも関係があるようです。
 
「以前は東京でコンピューター関係の仕事をしていましたが、家業である着色の仕事を消滅させたくないと思い、26歳で高岡に戻ったのです。先代のように若いうちから伝統工芸の技術を学んだわけではないので固定概念がなく、専門知識にとらわれなかったからこそ、伝統の着色技術を応用した新しい製品を生み出せたと思います。やがてはこれも次の伝統工芸としてスタンダードになっていってほしいですね」


 

【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること
折井さんは、伝統工芸の高岡銅器業界以外の人々との交流を多く取ることを心がけているそうです。
 
「異業種の方々との情報交換や、キャンプ・車・バイクなど共通の趣味の方々との会話の中から新しい発見があります。また同業者からの指摘や意見には素直に受け入れられない部分があるものですが、異業種の方々からの指摘やアドバイスは素直に受け入れることができ、コラボ事業へのチャレンジにも取り組むことができています。今のものづくりにこだわらず、常に意外性と意表を突くことを考えながら新しいことにチャレンジするように努めています」
 
同業者同士では考えられない発想や意見交換に刺激されて、時には思わぬ方向で新商品開発のアイデアが湧いてくることが多いのだといいます。


 
【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと

今では時計の文字盤や照明、花器やテーブルウェアなど、現代の生活にマッチした数々のアイテムがそろっています。ところが開発当初は、受け継いできた伝統の着色技術をそのまま薄い銅板に施すのは至難の業だったそうです。
 
「伝統の着色技術には高温の工程があるので、それでは銅板が使い物にならなくなってしまいます。そこで薬品の配合や絶妙な温度変化などの技術を組み合わせて、低温でも複雑な色を出す独自製法を編み出しました」
 
Momentum Factory Oriiのアイテムは、どれも金属ならではの硬質感と、渋みと深みのある色が複雑に交差した独特の風合いを持ち、そこにあるだけで静かなインパクトを放ちます。


 
【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと


折井さんは、伝統工芸品を古くさいものではなく、新しくてカジュアルなものとして現代の生活に溶け込ませたいと語ります。
 
「伝統工芸品を知らない若い世代が、これも高岡銅器なの?と驚くような意外性のあるものづくりを目指しています。ひと目見て『カッコいい!』と感じてもらいたいですね」
 
過去の伝統から生まれた新しい技術が、次の時代のスタンダードになっていく、Momentum Factory Oriiではその歴史が日々刻まれているのです。

 

 

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