人の動きや世間の流れを見て作品のひらめきに #鈴木石太郎タンス店 鈴木浩昭さん

創業から約130年以上も続く老舗の工房で、伝統と現代の新しさを取り入れた桐製品を作っている、鈴木石太郎タンス店の4代目となる鈴木浩昭さんにお話を伺いました。

 

 
【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて

人の動きや世間の流れを見て作品のひらめきに #鈴木石太郎タンス店 鈴木浩昭さん


1887年創業の鈴木石太郎タンス店は、新潟県加茂市の伝統工芸品である「加茂桐簞笥(桐タンス)」の老舗です。工房では、長い年月にわたって受け継がれてきた伝統技術をベースに、良質な国産桐材にこだわって、材料の選定から仕上げまでを一貫して行っています。昭和初期には嫁入り道具の定番とされた純和風の加茂桐簞笥作りはもちろんのこと、近年は現代のライフスタイルにも合う“和モダン”の製品も作っています。
 
幼い頃から家業の桐簞笥工房が遊び場だったという鈴木さんは、地元の高校を卒業後に東京の大学に進学し、卒業後は東京で就職しますが、数年後に地元に戻り桐簞笥職人になりました。当時は何の迷いもなく工芸の道に入ったのだといいます。
 
「江戸時代末期より全国的に名を馳せ、今なお全国最大の桐簞笥の産地である、新潟県加茂市に工房を構えています。純和風の加茂桐簞笥を得意としながらも、現代を生きる皆様の生活に馴染むよう、シンプルで飽きの来ない製品を作ることを心がけています」
 
職人気質を持って伝統を忠実に継承する誠実さと、遊び心を効かせる創意工夫の精神で、使い手に添い遂げる桐製品を生み出し続けています。

 

 
【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること
鈴木さんは、人との出会いや街歩きをしている中で、次のものづくりへのヒントが思い浮かぶのだそうです。
 
「色々な町を歩き、ものを見て、なぜここに人は集まるのか、なぜこれを買うのか、など私なりに考えて物作りの参考にしています。人とのご縁も大切で、展示会等に積極的に参加して異業種の方と交流すると、世間の動きを知ることができます。こうした活動の中から『これから何を作れば良いのか』というひらめきが生まれます」
 
普段の生活では、田舎でこそ感じられる四季の変化とそれに応じた食生活を大切に暮らしているという鈴木さん。心地よくゆったりとした時の流れに身を置いているからこそ、現代のライフスタイルのめまぐるしいまでの変化を確実にとらえ、伝統工芸をモダンに進化させる技を繰り出せるのかもしれません。

 

 
【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと

人の動きや世間の流れを見て作品のひらめきに #鈴木石太郎タンス店 鈴木浩昭さん

鈴木さんは、日々当たり前のように桐簞笥作りを続ける中でも『桐でその形を作ることの意味』を問い続けながら、『今買えなくてもいつかは買いたい』『いつかは欲しい』と思わせる物づくりにこだわっています。
 
「直してでも使い続けたくなるものを作っていきたいのです。また、どうしても生活に必要ではないが、なんか良いよねと感じられるような、作り手自身が欲しいと思うものを作ることも、使い手に伝統工芸品の良さを伝える糸口になります」
 
鈴木さんが作る桐製品の中には、スマートフォンから流れる音楽を響かせる桐エコスピーカーのように、趣味の遊び的要素を持ったものもあります。
 
「桐エコスピーカーは、和楽器のお琴のように優しい音色を奏でます。スピーカーも材質や形状によって全然違う音になるのです」
 
誰もが取り入れやすい桐のアイテムを通して、今の生活を充実させる新しい伝統工芸を提案しています。

 

 
【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと
「昔から使われている物である伝統工芸品には、日本の風土に適したものが多い」と鈴木さんはいいます。
 
「和の良さを残しながら新しいものにチャレンジしていくことが『懐かしいが新しい』という感覚を生み出し、伝統工芸や日本の文化を継承していくことにつながると思っています」
 
伝統工芸品としての作りのよさや素材のよさはそのままに、伝統技術を用いて新しい発想の製品を生み出し続けることで、その魅力が次世代へと受け継がれていくのでしょう。
 

 

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SERENDOUCE CRAFTSでは、日本の伝統工芸品と暮らす現代の美しさと心地よさを提案しています。
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