最高峰の伝統工芸を日常に溶け込ませるプロダクトやサービスを提供するKiwakotoのディレクター、吉村優さんにお話を伺いました。
【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて
京都を拠点として2018年にスタートしたKiwakoto(キワコト)は、日本の伝統工芸品の素晴らしさを、日常に寄り添うものに溶け込ませたプロダクトやサービスを生み出しているブランドです。
「親会社であるマツシマホールディングスは自動車ディーラーで、立ち上げメンバーの中に工芸に関わってきた者はいないという異業種参入です。親会社の当時専務(現代表)松島一晃の『京都の街に恩返しをしたい』という思いと、立ち上げメンバーの『工芸はかっこいい。自分たちが関わることで残していきたい』という熱意で誕生しました」
ブランドのパートナーである工芸士や工房は、若手の作り手のみならず何代も続く老舗までと幅広く、Kiwakotoのものづくりを支えています。
「京都を中心に日本文化を支えてきた工芸士や工房の手掛けるものを現代的にデザインし、ライフスタイルとして提案することをミッションとしているため、自分たちが出会い、魅力を感じた方々とものづくりをしています」
ブランド名は“格別であるさま”を意味する、日本の古語“際殊(きわこと)”という言葉から名づけられたように、最高峰の伝統工芸品を、日常生活にマッチする使い勝手やデザインに落とし込んだアイテムを作り出しています。
【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること
吉村さんは、伝統工芸に新たな価値や解釈を与え現代の人に届けるために、SNSや街中、お客様からなど常に新しい情報に触れるように心がけているといいます。
「古いもの・ことからも学びは多く、年配の職人から聞く『なぜこのような作り方になったのか』という話や茶席での亭主からの話、お茶屋の女将や能楽の当主から話を聞くこともあります。本や博物館からも紐解きますが、その道でまさしく今、動いている“人の話”には、その方の経験から生じる様々な解釈が加わり、思いがけず、AとBのつながりを見出せることがあります」
「工芸や伝統芸能には哲学があり、日本人のDNAを形成する根幹だと実感している」という吉村さんは、その道にいる方と多くの接点を持ち、話をすることに意識的に取り組んでいるそうです。
【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと
『伝統工芸を日常使いすること』を特に意識したテーブルウェアシリーズは、家紋から着想したタイムレスなデザインが魅力です。
「器の縁のデザインは、自然賛美の意識や不足の美を表現し、和の花をモチーフに家紋を描くように図形に落とし込みました。正円で構成される2次元のデザインを職人が手作業で3次元につくりあげると、当然、僅かな歪みが生じ、整い過ぎていない心地よさが生まれます」
一方で品質と価格については『作家の一点もの』と『職人の数もの』の中間に立つことにこだわっています。
「職人がモデリングした器から鋳込み型を取り、生の生地までは量産方法で制作します。その後、器の削りや釉薬の工程に職人の手が入ります。個体差の魅力を追求しつつ、一定の品質で数量をつくることのできる体制を構築しています」
このテーブルウェアをきっかけに、工芸品が使い手に長く愛されることは、工芸士であり職人でもある作り手が、安定的な仕事の機会を得て、自身の未来の作品やチャレンジへの余力を生み出すことにもつながっているのです。
【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと
吉村さんはKiwakotoの取り組み自体が「伝統文化や技術を継承するための挑戦」なのだと語ります。
「私たちのビジョンは『残すべき価値を抽出・再編し、未来へ届けること』。日本人自身が国の文化・伝統技術にもっと誇りをもつ世にしていきたいのです。現代の感性で、改めて伝統を眺めたときに、カッコイイ、素晴らしいと感動する気持ちを、Kiwakotoが商品や体験を通じてお客様に提供することが、継承に繋がると信じて活動しています」
「伝統は時代の空気に添って変化し生き残ってきたもの」と捉えるKiwakotoは、次世代の伝統を私たちの暮らしに届けています。
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SERENDOUCE CRAFTSでは、日本の伝統工芸品と暮らす現代の美しさと心地よさを提案しています。
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