生まれ故郷の豊見城から手仕事のぬくもりを伝えたい
大城工房がある沖縄県豊見城市は、やちむん作家の大城雅史さんが生まれ育った場所でもあります。周りにはパパイヤの木が生い茂る、街はずれの工房で生み出される器は、ほどよい重みでしっとりと手のひらになじみます。
やちむんとの出会いは、4~5歳ころに行った陶器まつりの記憶にまでさかのぼります。唐草や丸紋の柄や色など、伝統的なやちむんのデザインが大好きだったそうで、その時の壺や器が並ぶ光景をいまだに覚えているほど印象的だったとか。
高校卒業後は沖縄ならではの仕事を求め、泡盛を貯蔵する酒甕製作のろくろ職人の道を選びました。酒甕作りでは、新規性のある形を生み出すことに面白さを感じましたが、地元のやちむん作家との出会いを通じて、次第にやちむんの印象を大きく左右する釉薬の表現の幅広さに惹かれるように。「地元から愛される作家になりたい」と、やちむんの作陶の道へ進むこととなります。
素材への探求心と書道で培った筆使いから生まれる美しさ
大城さんの器は、伝統的なやちむんのデザインを用いていながら、その表現は独創性にあふれています。特に釉薬は、その色合いや質感から沖縄らしさを感じてほしいと、地元の素材を積極的に使っています。
「沖縄産のクチャと呼ばれる泥や、工房のそばの土を掘りだして独自の釉薬を調合しています」
裏側にろくろを回してつけられた刷毛の跡がぐるりとついた濃い飴色の器には、豊見城産の土から作った釉薬が使われています。本来絵付けに使うには難しいと言われている土をあえて用いることで実現する、刷毛の流れの躍動感と、飴色の微妙な濃淡の面白さこそ、大城さんの器ならではの表現の1つです。
艶とマットの質感 コントラストを楽しんで
唐草や丸紋などの絵付けは、線がはっきりと描かれ、強い光沢を放っているのが印象的です。細かな筆使いのルーツは、こどものころから得意で10年以上続けたという書道にあります。
「書道で培った筆使いは、今の作風に活かされています。絵柄をかすれなく丁寧に塗ることで、沖縄の火山灰を使った釉薬ならではの艶感を最大限引き出すことができるのです」
大城さんの器に欠かせない表現である、マットな質感と絵柄の艶のコントラストは、通常よりも複雑な工程の積み重ねによって生まれます。同じ白地であっても、マットに仕上げた部分と艶の部分では、まるで違った色にみえます。異なる質感を組み合わせるアイデアは、陶器や磁器、絵画や自然、ときに金属の道具など、周りに存在する様々な質感を観察することから、もたらされるものだそう。
日常使いをしていても飽きが来ない器である理由は、器の中に質感の違いがいくつも盛り込まれ、見るたびに違った表情をみせてくれるから。絵付けはもちろん、器の裏側までいろんな角度からじっくりと眺めて、大城さんの「手仕事のあたたかみを感じてほしい」というこだわりを楽しんでください。
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