世の中をニュートラルな視点で捉えて発想する #NODATE 関 昌邦さん

「アウトドアで楽しむ」という新発想の漆器ブランドを展開する、関美工堂の3代目である関昌邦さんにお話をお聞きします。


 
【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて

世の中をニュートラルな視点で捉えて発想する #NODATE 関 昌邦さん


福島県会津若松市で2010年に誕生した漆器ブランドのノダテは、野外でお茶を楽しむ“野点(のだて)”が名前の由来です。美術工芸品やハレの日の贅沢品というイメージが強い漆器を、野外に持ち出して楽しんでほしいという発想は、どこから生まれたのでしょうか?
 
「祖父である初代は、会津塗の技術を使った世界初の漆の“表彰楯”を誕生させ、今でも国内TOPクラスの表彰の楯として使われていますが、表彰記念品だけでなく漆の技術は昭和時代に販売ピークを迎え、平成の需要低迷期以降は消滅の危機に瀕しています。3代目を継いだときに、日本の文化の礎として縄文時代から使われてきた漆文化を次世代に繋ぐため、今の日常の暮らしに求められるような漆製品を作りたい、という思いに駆られました」と語ってくれました。


 
【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること
ノダテの作品で表現される『漆器をアウトドアで楽しむ』というユニークなアイデアは、常識や先入観にとらわれていては生まれないはずです。関さんは日々意識しているという視点について語ってくれました。
 
「世の中を偏りのないニュートラルな視点で捉えることを心がけています。全体を見渡す俯瞰力、本質を見抜く洞察力、先々を見通す達観力の3つを大切にしています」
 
「漆器のワクワク感を伝えたい」と語る関さんのまなざしの先には、誰もが驚くような新しい価値観が捉えられているのです。


 
【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと

世の中をニュートラルな視点で捉えて発想する #NODATE 関 昌邦さん


漆器は実にさまざまな特性をもつ天然素材で、その中にはアウトドア向きの特性も多いそうです。
 
「ブランドの代表作の1つであるノダテマグは、漆の美ではなく、特性・機能をアピールしている漆器です。超軽量、そして冷水にも熱水にも、強アルカリや強酸にもびくともしない、また雑菌を死滅させるなど、漆は様々な特性・機能を備えた天然素材なのです。
私自身キャンプが好きで、森の中で使うなら、石油化学素材や金属より、自然素材に囲まれたいと思っていたので、漆器の特性・機能をフルに活かしたノダテマグが生まれました」
 
そして、木目を見せる“摺り漆”の技法で仕上げているのは、傷を気にせずカジュアルに利用してもらうためのこだわりなのだそうです。
 
「漆器は高級な美術工芸品だと認識されると、普段使いしづらいものになりがちですので、構えずに使える仕立てが重要です。フォルムにもユニークな要素を取り入れ、アウトドアで持ち運びがしやすいように革ひもを付けた今までにない漆器です。末広がりに玉縁を配しているのは、持ちやすさの意味もありますが、上方から当たる光と影の視覚効果で、まるで卓上に浮いているように見えるデザインにすることで『ノダテらしさ』を表現しています」
 
漆こそアウトドアに持ち出して、自然の中でその魅力を味わうのが最適シーンなのかもしれません。


 
【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと
関さんはノダテの漆器を作り続けることで、古来の素材である漆器の文化を守るとともに、会津という地域の個性や空気感を未来へ残したいと考えています。
 
「ノダテマグは素材だけでなく、伝統技術に裏付けられた職人の手仕事を大切にしています。その上で、現代のニーズを取り入れることで、次世代に繋がる新しい漆器のセオリーが生じ始めています」
 
その活動の1つが旧本社・工場をリノベーションした『Human Hub天寧寺倉庫』の開業です。ここは若手漆職人の自立を支援する場でもあり、会津のモノづくりやコトづくりに関わる人々が集まり刺激し合う場でもあります(https://camp-fire.jp/projects/550471/preview?token=19vvrkqk)。ノダテの漆器づくりは、会津のものづくりの現場を守りながら、人々と漆器との関係を新しく更新し、未来にその文化を残すことへとつながっていきます。

ブログに戻る

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。