自分の感性を大切にしたユニークな器づくり #國右エ門窯 一瀬惠太さん

注いで混ぜるだけで飲み物の味がまろやかになるカップなど、日常にやすらぎの時間を与える器づくりをしている、國右エ門窯の一瀬惠太さんにお話を伺いました。


 
【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて

自分の感性を大切にしたユニークな器づくり #國右エ門窯 一瀬惠太さん


長崎県波佐見町にある國右エ門窯は、1985年に初代の一瀬國重さんが開窯しました。父である國重さんは花鳥絵や山水画など、全て手描きにこだわった花瓶や大皿、大鉢などを製作しています。一瀬さんは、窯元の長男に生まれ、当初から後継者となることを決めていたそうです。
 
30代の前半に家業を継ぎましたが、それ以前は有田焼の大手メーカーで働き、窯の仕事を任されていました。作陶の技術は多岐にわたっているので、それぞれの技術をこなしながら身に着けていきました」
 
20代前半から、仕事と並行して2人の伝統工芸士や現代の名工に師事して絵付けなどの作陶技術の習得に励み、別の窯元でも学ぶことで、焼き物の技術を深く身に着けたといいます。
和モダンの紋様が美しいカップや、高台に愛らしい動物の表情が忍ばせてあるお椀など、絵付けの美しさや手作りの温かみのある器はもちろんのこと、特殊製法によって飲み物をまろやかにする機能性を備えたユニークな器づくりを続けています。


 
【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること
一瀬さんがものづくりのために意識していることは、「固定観念にとらわれないように、本やデザイン性のある資料などを見ないようにすること」だといいます。
 
「他の人と似たようなものではなく、際立って目を惹くものを作りたいからです。ものづくりが二番煎じになってはつまらないので」
 
休みのときは、海や山などを散歩して自然に触れることが多いのだとか。自然に湧いてくるインスピレーションから、ほかにはない新しい器が形づくられていくのです。


 
【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと

自分の感性を大切にしたユニークな器づくり #國右エ門窯 一瀬惠太さん


一瀬さんのものづくりのコンセプトは『ホッとする器づくり』です。代表作である『まろやかカップシリーズ』は、自然由来のミネラル成分を一緒に焼き込むという独自製法で作られた陶器で、飲み物を注いで混ぜるだけで不思議とまろやかな口当たりになり、風味豊かな味わいが楽しめます。
 
1日の疲れを癒してもらうために、休憩のひと息に役立つ器づくりを目指して開発しました。お茶やコーヒー、紅茶やお酒などの味を美味しくまろやかに変化させることができるので、今までブラックコーヒーが苦手だった人や、お砂糖をあまり摂取できない人なども飲みやすくなります」
 
特にこだわったのは、ミネラル成分を草木などの自然由来100%のものを使用していることだそうです。中の飲み物がカップの内側に触れると変化を起こしまろやかな味になることは、研究データでも裏付けられています。
 
「鉱物などでも同様の変化を起こすものがありますが、自然由来のミネラルのほうがより体に安心安全であることがわかっています」
 
ギャラリーでは、一瀬さん自らコーヒーを淹れて、まろやかカップで飲み比べを試してもらうのだそう。訪れた人々が「暖かな気持ちになれた」「居心地のよさを感じた」と口々に語ることからも、一瀬さんの器には、使い手へのやさしい心遣いがたっぷりとつまっているのだとわかります。

 

【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと

自分の感性を大切にしたユニークな器づくり #國右エ門窯 一瀬惠太さん


一瀬さんは最近の陶磁器業界の人手不足を憂えているといいます。その影響で、伝統製法や手描きの器が作られにくくなり、柄の転写や印刷によってつくられる器が多くなっているそうです。
 
「弊社は吹けば飛ぶような小さい工房ですが、伝統を重んじ、手描きや手作業で作られた器の良さを伝えるべく、唯一無二の器を作り続けていきます。この伝統を次の後継者へ繋げていきたいと願っています」
 
陶磁器の枠にとらわれず、「世の中にない器を生み出したい」と語る一瀬さんは、陶器と金属素材を組み合わせた新発想の器づくりにチャレンジしています。伝統と新しい技術が融合した器を、次世代へと引き継ぐべく、毎日の作陶を続けているのです。
 
 

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