いい枡づくりは自然を感じて心を整えることから #大橋量器 柴田康平さん

伝統的な枡から生活になじむ新発想の枡まで様々な枡の形を提案している、大橋量器の柴田康平さんにお話を伺いました。

 


 
【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて

いい枡づくりは自然を感じて心を整えることから #大橋量器 柴田康平さん


岐阜県大垣市にある大橋量器は、1950年創業の枡専門メーカーです。枡といえば、今でも「一合、二合」といった単位の感覚が、日本人なら当たり前のように染み込んでいるものです。そして、枡から漂う天然ヒノキの甘い香りやぬくもりのあるなめらかな木肌に、誰もがほっと心癒やされるはずです。
そんな枡に魅せられて大橋量器に入社した柴田康平さんは、大学では教育関係の勉強をしていましたが、美術やデザイン学部の友人と接するうち、ものづくりに興味を持つようになったそうです。
 
「ものづくりの中でも日本の伝統産業に関わりたいと考えていたときに、枡の日本らしさに惹かれたのです。シンプルでカッコいい木の箱に魅力を感じ、職人として枡づくりを盛り上げたいと思いました」
 
1300年の歴史を誇る日本の枡の素朴な美しさを、多くの人々に、そして次の世代へと伝えたい、そんな想いを胸に日々枡づくりに取り組んでいます。
 
【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること
柴田さんは、いい枡を作るために、仕事とプライベートの2つのバランスを取ることに気を配っているといいます。その中でも余暇に登山をする時間を大切にしているのだそう。
 
「生活にメリハリがつくので私にとって登山はとても大切なものです。少しじめっとした森の匂い、ゴツゴツとした岩肌、虫や鳥の鳴き声を感じながら歩いていると、日常を忘れて大自然を満喫することができます。 普段は始業の前に空を眺めることや、日光を浴びることで心の整理をします。バタバタしがちな朝も、わずかでも自然を感じることができれば良い1日になります。どちらも良い枡を作るために必要な時間です」
 
きっちりと組まれた美しい枡は、自然に意識を向け、心を整える習慣の積み重ねから生み出されているのです。
 


【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと

いい枡づくりは自然を感じて心を整えることから #大橋量器 柴田康平さん

天然のヒノキは、長年森で育ってきた証しである木目がすべて異なるため、枡にはひとつとして同じデザインはありません。
 
「ヒノキは柔らかく加工がしやすい木材ですが、天然木と人工林では硬さや木目などに差がありますし、産地によって香りや見た目にも違いが出てきます。すいちょこなどの酒器には日本酒との相性を考え、香りの強いヒノキを使い、ジョッキなどは隙間なくきれいに組むために、固くて反りの少ないヒノキを使います。商品によってヒノキを使い分け、ヒノキの個性を活かせるような商品づくりを行っています」
 
特に日本酒とヒノキの香りの相性は最高で、お酒の味をさらに美味しく感じさせてくれるのだとか。自然の木の香りを楽しめる枡のテーブルウェアは、食事やお酒を嗜むひとときを、さらに印象深い体験へと高めてくれるはずです。


 
【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと

いい枡づくりは自然を感じて心を整えることから #大橋量器 柴田康平さん

伝統的な枡の形はシンプルな直方体ですが、最近では若い職人たちのチームワークによって生み出された、テーブルウェアとして使える食器や、盃、ビアジョッキなどの新しい形や発想の枡の開発にも力を入れています。それらの枡づくりの工程でも、職人の道具や刃物を使いこなす技や緻密な手作業が求められます。
 
「枡はシンプルな見た目だからこそ誤魔化しがききません。わずかな寸法のずれがあるだけで、組んだときに隙間が出来ますし、板を接着する糊は多すぎず少なすぎず、均一に塗れる量を見極める職人技が必要です。見えないような細かい部分までこだわりながら、これからも日本の生活に深く関わっていけるような枡づくりをしていきたいですね」
 
柴田さんが抱く「シンプルだからこそカッコいい、日本の枡の魅力を次世代に伝えたい」という思いが、現代にマッチした新しい桝づくりの源になっています。
 

 

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