新感覚の漆器のモチーフはうつろう自然の姿から #浅田漆器工芸 浅田明彦さん

今の生活に合う現代的な色使いと、洗練されたデザインの漆器を生み出している、浅田漆器工芸の浅田明彦(はるひこ)さんにお話しを伺いました。
 

 


【1】工芸の道を志したきっかけやご自身の背景、工房の歴史や成り立ちについて

新感覚の漆器のモチーフはうつろう自然の姿から #浅田漆器工芸 浅田明彦さん

石川県加賀市山中温泉にある浅田漆器工芸は、伝統工芸品である山中漆器を今の暮らしに合ったカジュアルな漆器へと進化させています。4代目となる浅田明彦さんは、高校卒業後に京都で漆と木地の技術を学んでから、22歳の時に家業に入り、轆轤(ろくろ)から塗り、蒔絵まで、漆器の基本を習得しました。
 
「当社の歴史は、1912年に初代の浅田京作が、轆轤を用いて木工品を製造する職人である『木地師』として独立したところから始まりました。その3人の息子たちも京作に師事して木地の技術を習得し、兄弟で高度成長期の需要を支えました。1977年に今の浅田漆器工芸を設立したのは、3代目である現社長の浅田孝です。山中の漆器を全国へ展開しようと、問屋での修業の後、製造から販売まで手掛けるようになりました」
 
近年、伝統的な黒や朱の塗りの漆器への需要が伸び悩む中「新しい技術を生かした、今の生活に合う器づくりをしたい」という思いから、普段使いしやすい漆器のブランドasadaを立ち上げます。木地や木目の味わいを大切にする山中漆器の伝統技術を守りながら、現代的な鮮やかな色使いと洗練されたシンプルな形を取り入れた新感覚の漆器は、日常の生活シーンにしっくりとなじみます。
 

 


【2】自らの五感を刺激するために取り組んでいることや意識していること

新感覚の漆器のモチーフはうつろう自然の姿から #浅田漆器工芸 浅田明彦さん

浅田漆器工芸の代表作でもある、石川県の四季をモチーフに外側をメタリック塗装で仕上げた『うつろい』シリーズや、和ろうそくの煤を器に写し取る『叢雲塗(むらくもぬり)』の表現は、工房の周りの豊かな自然に触れることから生まれてくると明彦さんは語ります。

 
「私の住んでいる山中温泉は文字通りの山の中にあります。自然環境の中ではひとつとして同じ形、模様はありません。そんな山中温泉のあふれる自然をモチーフにし、目で見て、触れて、心地のいい漆器を目指して製作しています」
 
工房の周りは田んぼと山の田園風景が広がり、冬になると積雪が1m近い豪雪地帯でもあるといいます。asadaの漆器には、刻々と移り変わる自然の表情が写し取られているのです。
 

 


【3】作品制作で大切にしていることやこだわり、作品を通じて伝えたいことや叶えたいこと


漆器には華やかで高級なイメージが伴いますが、浅田漆器工芸の漆器は、洋風なデザインと和のテイストを融合させることで、パスタやハンバーグなどの洋食もよく似合う、親しみやすいテーブルウェアへと進化しています。
 
「重視しているのは、シンプルで使いやすい漆器づくりです。新商品は、まず自分たちが実際に使ってみて使い心地をブラッシュアップしてからリリースします。お客様に喜んでいただくためには独りよがりにならず、どうしても使いにくいものは、販売しないという決断を下すときもあります」
 
また、明彦さんは、お客様との触れ合いを大事にするために、インスタグラムなどのSNSでは自ら投稿し、情報発信をしています。
 
「作り手の声をお客さまに届ける工夫を怠らないことが大切です。なぜその形・色にしたのか、作品作りにまつわるストーリーをきちんとお伝えできるように努めています」
 
作者が語る作品への思いを受けとれば、手にした漆器が一層いとおしく感じるはずです。

 

 
【4】伝統技術や文化の継承のために挑戦していることやこれから挑戦したいこと

新感覚の漆器のモチーフはうつろう自然の姿から #浅田漆器工芸 浅田明彦さん
新感覚の漆器のモチーフはうつろう自然の姿から #浅田漆器工芸 浅田明彦さん

同じ石川県内の工芸品の中でも、全国的な知名度を誇るのが輪島塗です。明彦さんは、それに少しでも近づけるように山中漆器を有名にしていきたいという思いを持っています。
 
「山中には、まだ日の目を浴びていない職人さんがたくさんいます。その技を生かしたこだわりの器を開発していくことで優れた職人の名を広め、後に続く若い職人にも仕事を渡せるようにしていきたいですね。若い職人の作品を発表できる場を作って、産地を盛り上げていきたいと思っています」
 
その思いに呼応して、山中漆器のものづくりを学ぶべく全国から若い作り手が集まり、伝統技術を未来へとつなぐ活動が始まっています。
 
 

ブログに戻る

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。